東京高等裁判所 昭和40年(行ケ)40号 判決
当事者間に争いのない引用例の記載内容及び成立に争いのない甲第十二号証(実公昭二九―七四八八号実用新案公報)によれば、本願考案の登録出願の日(それが昭和三十四年三月二十三日であることは、当事者間に争いがない。)以前の発行にかかる実用新案公報である本件引用例に
(イ) 熱電対4を装置した碍子6を、その先端に取り付けた取付管7が遮蔽管3内に進退自在に収納され、
(ロ) 取付管7は、柄杆5の先端に螺合され、柄杆5は、さらに、受縁9に嵌挿され、受縁9には突子11が設けてあつて、遮蔽管3に設けられた案内孔12内に突入しており、
(ハ) 遮蔽管3の内面に突設した突子8と柄杆5を嵌挿した受縁9との間には、バネ10が縮設(取付管を遮蔽管内に引き入れる作用をする。)してある、
構造を有する熱電対を利用した表面温度計が記載されていることが明らかである。
しかして、右引用例記載の表面温度計と、当事者間に争いのない本願考案の要旨に示されたサーミスター温度計とを対比すると、その構造及び作用効果よりみて、本願考案は、サーミスターを利用するものであるに対し、引用例は熱電対を利用するものである点において異るが、本願考案における導管1、外套4、突部5、溝8及び発条11は、それぞれ引用例の取付管7、遮蔽管3、突子11、案内孔12及びバネ10に相応し、いずれも、サーミスター素子又は熱電対素子の進退、保護に関係する等その作用効果においても相似たものがあることを認めうるところ、温度探知体として、サーミスターを使用することが本願出願前公知であつたことは成立に争いのない甲第十三号証に徴しても明らかであるから、本願考案は、本件引用例及び右公知事実から、当業者が容易に推考しうるものと認定するを相当とし、右認定を左右するに足る証拠はない。
原告は、この点に関し、本願考案と引用例との間に、目的、構造及び作用効果の点において、その主張のような差異がある旨主張し、このような差異のあることは、被告においてもこれを認めて争わないところではあるが、この程度の差異があるからといつて、これをもつて、直ちに、前認定をくつがえし、本願考案をもつて、引用例及び右公知事実から容易に推考できる域を越えるものとすることはできない。
したがつて、右と同趣旨に出でた本件審決の認定は結局正当であり、これに原告主張のような違法の点はないものといわざるをえない。もつとも、本件審決が、温度探知体として、サーミスターを使用するか、熱電対を使用するかは、本願のような温度計においては均等手段である旨説示している部分は、両者が置換可能であるとする被告指定代理人の釈明とともに、措辞妥当を欠く嫌いなしとしないが、その趣旨とするところは、前判示のとおりであると解することができるから、これをもつて、判断を誤つたものとすることはできない。
(むすび)
以上説示のとおりであるから、本件審決に原告主張の違法ありとする原告の本訴請求は、理由がないものといわざるをえない。よつて、これを棄却することとする。
〔編註〕 本件に関する図面は左のとおりである。
第一 (本願考案の図面)
<省略>
第二 (引用例の図面)
<省略>